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さて、今日は何をしようかな。

【まとめ】31歳ヘタレの個人的視点で選ぶスピッツの名曲12選

つい先日、7月5日にスピッツのシングル・コレクション”CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection”が発売されました。

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2006年にリリースされたCYCLE HITの続編となっており、今回は2006年以降のシングルが収録されています。
また、結成30周年を記念して、メジャーデビューからのコレクション・ボックスも発売されています。

 

スピッツのようなバンドになれば、誰にでも思い入れのある曲の一つや二つがあると思います。
それこそ、ずっと昔から好きだというディープなファンも多くいるかもしれません。
いろいろな年代の人から愛されているバンドですので、その人なりのスピッツ像というのがあっていいと思います。

 

スピッツといえば、なんともふんわりとした草野さんの歌詞が大きな魅力の一つでしょう。
でも、草野さんの歌詞に対する考察や、CDのレビューなんかは、もっと僕よりも上手な人がたくさんいます。
なので、今回は僕の個人的なスピッツの好きな曲を紹介したいと思います。

 

ヘビーメロウ


スピッツ / ヘビーメロウ

 

まず、今回のシングルコレクションには新曲が3曲収録されています。
その中の1曲である”ヘビーメロウ”は、めざましテレビのテーマ曲として大量にオンエアーされています。
曲の軽さや穏やかな曲の展開は、ここ数年のスピッツのエッセンスがぐっと詰まっていると思います。
そして、いつもながら、草野さんの何でも優しく包んじゃう声と歌詞が炸裂しています。

 

夜は明けたぜ 鶏も鳴いたぜ 期待裏切る
なんちゃってファンキーなリズムに乗って 生命灯せ

 

草野さんの歌う歌詞は、否定せず、すべてを肯定するような印象を受けます。
これが、ふとしたときに本当に乾燥した心に染みるんです。
「わかってるけど、でも…」という背中を押して、「それでもいいんだ」と思わせてれる優しさの塊です。
朝に聴けてほっこり嬉しくなるのは、きっとこういう曲なんだと思います。

 

春の歌


スピッツ / 春の歌

 

最近のスピッツのトピックは、シングルコレクションや新曲だけではありません。
2005年にリリースされたこの”春の歌”を、藤原さくらさんがカバーしました。
実写版の”3月のライオン後編”の主題歌にもなっています。

 

3月のライオン”の原作者である羽海野チカさんは、過去に”ハチミツとクローバー”でもスピッツとの繋がりを持ちます。
表題の”ハチミツ”は、スピッツのアルバム”ハチミツ”から取られているそうです。
劇中にスピッツの曲がたくさん使用され、印象に残っている人もいると思います。
(ちなみに”クローバー”はスガシカオさんのアルバムにちなんでいます。)

 


ぼくのりりっくのぼうよみ - 「Be Noble」ミュージックビデオ

 

ちょっと話はそれますが、”3月のライオン前編”ではぼくのりりっくのぼうよみの”Be Noble”が使用されました。
ぼくのりりっくのぼうよみは、新たな色彩感覚をもったアーティストとして注目を集めています。
彼の作品には、本に印刷された文字のインクから生まれてきたような不思議な世界感があります。
喧騒や雑多な感じ、美しさや儚さ、そういういろいろなものが、不思議と整然と収まったような感じを受けます。

 

ホタル


スピッツ / ホタル

 

スピッツと言えば、多くの人にとって「空も飛べるはず」や「チェリー」などが代名詞になっていると思います。
でも、僕がリアルタイムではっきりと記憶がある最初のスピッツのシングルがこの曲です。
リリースは2000年で、このシングルの前にベストアルバム”RECYCLE Greatest Hits of SPITZ”、大ヒットしています。

 

スピッツの新曲としては久しぶりのリリースだったので、記憶に残っているのかもしれません。
改めて聞くと、草野さん自身の悩みや迷いを歌っているような気もする。
少しコントラストが低く、冷たく感じられる質感で、ホタルのように自ら光って飛びたいという閉塞感なんかも感じさせます。

 

モリー


スピッツ / メモリーズ

 

こちらは、先ほどの”ホタル”に次ぐシングルです。
当時の記憶は曖昧ですが、あんまりスピッツらしくなくて売れてなかったような気がします。
でも、個人的には、僕がこの後スピッツが好きになるきっかけになった曲でもあります。

 

中学生だった当時の僕は、とっても熱心にラジオを聴いていました。
そこでリリース前に耳にしたこの曲は、それまで僕の中にあったポップな印象からかけ離れていて、意外性に衝撃を受けました。
と同時に、どうしようもないくらいノリでゴリ押しした感じが、ツボに入ったんですよね。

 

夢追い虫


スピッツ / 夢追い虫

 

で、この”夢追い虫”が、僕がスピッツを好きになる決定打になった曲です。
リリースは2001年で、当時話題になっていた飯島愛さんの”プラトニック・セックス”の主題歌でした。
映画やドラマもあんまり記憶に残ってないのですが、当時からこの曲はずっと好きな曲の一つです。

 

命短き ちっぽけな虫です
うれしくて 悲しくて 君と踊る

 

曲のざらっとした仕上がりや、いつもより草野さんが剥き出しの感じがします。
ちなみに、スピッツの所属事務所はグラスホッパーと言います。
”二人で過ごせば 羽も生える 最高だね!”という歌詞といい、何か別の意味があったりするのかもしれません。

 

さわって・変わって


スピッツ / さわって・変わって


そして、ついに機は熟します。
この曲で、スピッツは遂に亀田誠治と出会うのです。

 

このあたりからのシングルでは、優しいだけじゃなく、野心に溢れたスピッツの姿を知ることになります。
ここからの数年間の作品というのは、それほど商業的に大ヒットした曲は多くありません。
しかし、本当にスピッツが脂の乗った絶頂期にあたるのではないかと思っています。

 

意味がありそうでなさそうで、もしかしたらあるかもしれない歌詞。
そして、力強いけど、しなやかで遊び心を忘れないスピッツのバンドとしての力を感じます。
カップリングのガーベラも秀逸で、アルバム”三日月ロック”に収録されてます。

 

けもの道

 

先ほどの”さわって・変わって”などを収録したアルバム”三日月ロック”は、広いジャンルとアプローチを取り入れた革新的なアルバムです。
インディーズ時代、そして、ヒット曲を連発した爽やか良曲バンド期、それから、ちょっと間を挟んで活動や歌う意味に悩んだ時期…
そして、この”三日月ロック”からが第4次スピッツの幕開けになっています。

 

”けもの道”は、そんなアルバムのラストを飾る曲です。
スピード感がありつつも、周りや風景を楽しむ余裕すら感じるスピッツの貫禄がばっきばきです。
まだまだこれから攻めてくぜって感じがするし、リピートすると1曲目にストンと繋がります。

 

正夢


スピッツ / 正夢

 

こちらは2004年リリースのシングルで、アルバム”スーベニア”に収録されました。
ギターと伸びのあるメロデイーを前面に押し出した、力強くも優しい新しいスピッツを象徴する曲だと思います。
ストリングスも入り、珍しくとてもスケールの大きな一曲になっています。

 

この曲は、穏やかな曲なんだけど、音に少しぴりぴりとした緊張感があります。
曲調はだいぶ違うのですが、”夢追い虫”に参加したエンジニアの高山徹さんが参加しています。
音のハリというか、音の持つ熱量が大きいように感じられる絶妙なバランスだと思います。

 

みそか

 

そんな”スーベニア”のラストは、この曲で締めくくられています。
で、リリースから10年以上経っていますが、未だにこの曲がいちばん好きだったりします。
毎日聴いているわけではないけど、やる気を出すときに聴くことが多いです。

 

輝け 不思議なプライド胸に
凍てつく 無情な風の中で

 

この出だしの歌詞だけでグッとくるし、走り出したくなります。
そんな風に、悩んだり立ち止まったりするときに、一歩前に進むように力を貸してくれます。
無骨で荒いギターの音と、サビに向けて疾走感の増す展開が、細田減の追い風になっている気がします。

 

ルキンフォー


スピッツ / ルキンフォー

 

個人的には”スーベニア”以降、スピッツはまた新たなフェーズに入ったと思っています。
それまで、内に秘めつつもさらけ出してこなかった激しさなんかは、少し鳴りを潜めるようになりました。
かわって前面に出てきたのは、肩の力を抜いた、優しい風のようなポップネスです。

 

それを象徴するような曲が、この”ルキンフォー”だと思います。
日常を切り取ったような、何気無い風景に溶け込む雰囲気や世界感は、誰の心にもしっとりと沁みていくでしょう。
「人それぞれ、いろいろあったりするけど、でも、少しずつ前に向かって進んでいこうよ」と、そんな感じの穏やかさがあります。

 

 

こちらも”さざなみCD”に収録されたアルバム曲です。
アルバムのタイトルチューンらしく、”みそか”に通じる勢いや疾走感のある曲です。
この時期には、”魔法の言葉”、”ルキンフォー”、”群青”と、ある意味スピッツらしい比較的ポップなシングルが続きました。
現在のスピッツに通じているのはこういったシングル曲の方でしょう。

 

でも、やっぱり落ち着くのには早すぎます。
優等生の中にある反抗心というか、ちょっとしたいたずら心がスピッツらしいのです。
あえて言えば、「ここではないどこかを求める」感のあるこの曲は、とてもパンクだと思います。

 

新月

 

最後に紹介するのは、アルバム”とげまる”の収録曲です。

真夜中、小さな卓上の蛍光灯だけを着けた薄暗い部屋…何かが覚醒しそうで、何もいつもと変化のない自分が鏡に映る。
必死で何かを掴み取りたいのに、その「何か」がわからない。
はっきりとした意識下で思う、潜在意識や自分の内側の欲望には、なぜか得体の知れない感じを受けたりします。

 

この曲は、静かに、そしてゆっくりと始まります。
でも、歌詞の意味だとか表面的なものではなく、皮膚の下の細胞をひとつひとつ震わせるような感じがします。
曲の全編にわたって繰り返されるピアノのフレーズが、なんとも言えないカタルシスをもたらしてくれます。

 

【まとめ】スピッツの曲を構成する3要素

 

スピッツの曲の良さというのは、大雑把に言えば、

  1. すべてを肯定して、否定をしない優しさ
  2. 常に背中を押してくれる安心感
  3. 自分の内側のもう一人の自分の存在との対峙

と、こんな感じだと思います。

 

草野さんは、あまり歌詞について多くを語らず、聴く人それぞれに解釈を任せています。
甘酸っぱい恋愛のBGMになったりしているかもしれません。
チェリーなんかは、アコギの弾き語りでは定番の曲になっています。
もしかしたら、青春の1ページとして刻まれていたりするのかもしれません。

 

でも、僕なりの解釈だと、多くの曲は自分たちに向けて歌っているのではないかと思っています。
スピッツには、あまり「愛してる」とか言ったり、思い出に耽けるような曲は多くありません。
ですので、あんまりスピッツをしっかり聴いたことがない人にも、優しいだけでなく、強くしたたかなスピッツを知ってもらいたいと思います。
90年代に売れまくったヒット曲だけでなく、紹介したような曲も聴いて、新しいスピッツを見つけてくださいね。